インセイン「現の盃」

【トレーラー】
このさかずきをうけてくれ
どうぞなみなみつがせておくれ
はなにあらしのたとえもあるぞ
さよならだけがじんせいだ

君達はいつの間にか、四方を襖に囲まれた畳の間に坐していた。
そして、見知らぬお互い。
間にあるのは静寂。

インセイン「現の盃(うつつのさかずき)」

君は、如何にして現の世界に馳せ戻る?


【備考】
■2人3サイクル 特殊
■本当は怖い現代日本対応

【使用ルルブについて】
デッドループを使用するかどうかはPLとGM間で相談。

【ハンドアウト】
■PC1
君はいつの間にか、見知らぬ和室に身を置かれていた。
日常の記憶はある。
だが、なぜここに来たのか、どうやってきたのか、記憶はない。
ここは夢の世界なのだろうか。

君の使命は、「元の日常へと戻る」ことである。

■PC2
君はいつの間にか、奇妙な和室に身を置かれていた。
日常の記憶はある。
だが、これからどうすればいいのか、理解が及ばない。
ここは夢の世界なのだろうか。

君の使命は、「元の日常へと戻る」ことである。

【追記】
新CoC版もあり。新CoCプレイ済みでもプレイ可能。
https://anaguma-sha.booth.pm/items/3804534

本作は、「著:河嶋陶一朗/冒険企画局、新紀元社」が権利を有する『マルチジャンル・ホラー RPG インセイン』 の二次創作作品です。

————— 以下 シナリオ概要—————
すべての秘密が記載されています。
未プレイの方はご注意ください。

【シナリオ概要】
PC1はPC2をかつて、切り殺したことがある。
それは前世の話だ。

君達はかつて親しい間柄だった。
しかし、PC2は鬼にその身を乗っ取られてしまう。
追い詰められたPC1はそこにあった刀でPC2を切りつけた。
最初、そして今は髭切と呼ばれ、今世では「鬼斬国綱」と称されるその刀剣。
ひとときの間「友切」と呼ばれた刀で。

そして月日は流れる。
今世でも君たちは、親しい関係になっていた。
再会を約束し、別れ、北野天満宮で再び会うその時、かつて斬られた鬼がその場を嗅ぎ付ける。
君達を食らい、復讐を果たし、そして現世に舞い戻るために。
君たちは今度こそ殺し合わず、無事に鬼を倒して現世に戻れるだろうか。

 

 

【ハンドアウト】

■PC1
君はいつの間にか、見知らぬ和室に身を置かれていた。
日常の記憶はある。
だが、なぜここに来たのか、どうやってきたのか、記憶はない。
ここは夢の世界なのだろうか。

君の使命は、「元の日常へと戻る」ことである。

■PC1秘密
ショック:なし
君は本当は目の前の人物のことを知っている。
遠い昔、子供のころに離れ離れになった覚えがある。
何が理由だったのか、その後どうなったかはわからない。
だが、PC2は君にとってかけがえのない存在だった。それは間違いのないことである。

君の使命は、「真実を知り、共に現実に戻る」ことである。

■PC2
君はいつの間にか、奇妙な和室に身を置かれていた。
日常の記憶はある。
だが、これからどうすればいいのか、理解が及ばない。
ここは夢の世界なのだろうか。

君の使命は、「元の日常へと戻る」ことである。

■PC2秘密
ショック:PC1
君は本当は目の前の人物を知っている。
遠い昔、君は目の前の人物に殺されたことがある。
なぜ殺されたのかはわからない。
だが、そのことを許すわけにはいかない。
それはどうしようもなくこびりついた憎悪である。

君の本当の使命は、「真実を知り、自分の仇を討つ」ことである

 

 

 

【使用狂気カード】

通常狂気カード+本当は怖い現代日本から8枚

推奨というかシナリオ作った人が使ってるもの
(暴力衝動・依存・パニック・闇からの祝福・なんで私だけ!?・怪物・歪んだ心・血への渇望)

 

 

【プライズの秘密について】

本シナリオに登場するシナリオの【秘密】はすべて、情報判定を経なければ開示されないものであり、非拡散情報として扱う。

 

 

【シーン表】

1:しんと静まりかえった部屋の中、雨音が聞こえてくる。
2:襖の向こうからとんとん、とんとんと音がする。誰かいるのか。
3:ひどいめまいがして膝をつく。なんだか気分が悪い。
4:ふっと目の前に、刃を握った人物が見えた。白昼夢、だろうか。
5:足元の畳に座り込むとぐっと疲れがのしかかってきた。
6:ふっと足元に何かが舞い降りてきた。これは、なんだろうか。
7:急にポケットから携帯電話の着信音が鳴り響く。電波は立っていないのに。
8:がくりと首がおちてはっと顔を上げる。いつの間に寝ていたのか。
9:急に昔の記憶が蘇る。この記憶にある風景はいったい。
10:一瞬室内が暗くなる。めまいか、それとも。
11:部屋の隅に、なんだか見覚えのあるものが落ちている。これは…
12:どこからか奇妙な笑い声が聞こえてくる。気のせいだといいのに。

 

 

【ハンドアウト】

■獅子の襖
勇ましい獅子の絵が書かれた襖。
かなり古い襖のようだ。

【秘密】
<拡散情報>
ショック:全員
恐怖判定 死

襖の向こうには畳の部屋があった。
い草の香漂う部屋は赤黒く鉄くさい血が飛び散り、広がり、嫌悪感漂わせるものへと変貌している。
その中央に、一振りの刀が突き刺さっていた。

この情報を開示したPCはプライズ、【刃毀れのある日本刀】を取得する

 

■桜の襖
風に舞い散る桜が描かれた襖。
墨染を背景に桜は渦を巻くように描かれ、禍々しくも見える。

【秘密】
<拡散情報>
襖の向こうには板間があり、お膳台と酒の入った土器(からわけ)が置かれている。
その周囲には様々な写真が散らばっている。
写真には覚えのある光景が広がっている。
幼いころの君達が仲むつまじく遊んでいる写真である。
それらは君達が幼い頃、親しい関係性であったことがうかがえるものだ。
ただ、どういうわけか白黒の写真も含まれているのはどういうことか。
また、写真の中には最近の君達の姿もある。最近、君達は出会っていたようだ。

この情報を開示したPCはプライズ、【かわらけの盃】を取得する。

【ゾーキング】
古い写真は着物を着たりしているなどかなり古めかしい。
白黒の写真は全てPCたちには覚えがないが、どこか懐かしいと感じる。
カラーの写真に関しては、一緒に撮った記憶はないが撮られた場所には覚えがある。
※前世の写真(モノクロ)と今世の写真(カラー)の記憶と物品が混在している状況である。

 

■雨中の襖
しとしとと降り注ぐ雨と、粗末な橋が描かれた襖。
どことなく、青臭い香がする。これはい草の香、それを錯覚したものなのだろうか。

【秘密】
ショック:全員
襖を開けばその向こうには、襖と同じ光景が広がっている。
しとしと降り注ぐ雨と橋。
橋のたもとには、何かの生首が転がっている。
よくよくみればそれは鬼の生首だ。
そしてその生首には見覚えがある。
遠い昔にこの鬼に二人とも襲われ、PC2の体にとりついた記憶がある。そして祓いきれなかった奴はまだPC2にとりついている。

 

■真っ赤な襖
血膿のように赤黒く染められた襖。
<最初に配るハンドアウトではあるが、条件を満たすまで調査判定の対象にはできない。この条件はPCには秘匿とする>

<2サイクル終了のマスターシーン以降のハンドアウト。ハンドアウトは以下のものに変更になり、調査が可能となる>
襖は依然として開く様子はない。
どことなく異臭がする。
他の襖と違い、絵が描かれているわけではないはずだが、色むらがまるでだまし絵のように異形の者を描いているように見えて、眺めていると不安だけが募っていく。
この襖の向こう側に、何か、いる。

【秘密】
ショック:全員
恐怖判定:暗黒

襖の向こうには、首のない体が転がっている。
その体は、頭がないにもかかわらず、ケタケタとすさまじい笑い声をあげている。
「殺す殺す」
「今度こそ」
「今度も殺し合ってもらおうぞ」
「早く早く」
「そして」
「うぬらの苦しみを食らって現世(うつしよ)に戻る」
欲しい。欲しい。
そういいながら、頭部のない死体はのたうっている。
思い出した。
この死体は、鬼の体だ。
昔々、遠い昔に、生まれる前の人生の時にこの鬼に襲われ、鬼に憑かれ、前世の君達は殺し合った。
こいつが、襖の向こうにある光景の元凶だ。

 

■プライズ「刃毀れのある日本刀」
刃渡り80cm弱の日本刀。
特に銘などは見当たらず、血錆にまみれ、ひどい刃毀れで見るに堪えない。

【秘密】
ショック:全員
恐怖判定 刺す
この日本刀の名は「髭切」「友切」という、鬼殺しの伝説のある刀である。
そしてこの日本刀を手にしたPC1にPC2は斬り殺された。無残に。一方的に。
刀を握った瞬間、その記憶が鮮明に頭の中に浮かんでくる。
一面の血の海の光景を。

このプライズをクライマックス突入時に所持している者が相手の生命力を0にした場合、相手の意思に関係なく死亡させることができる。
クライマックス突入以降、プライズの受け渡しは不可とする。

 

■プライズ「かわらけの盃」
そっけない茶色の土器(かわらけ)の盃。
ふたつでひと組のようで、中にはなみなみと酒が注がれている。

【秘密】
盃には様々な意味がある。
かための盃、祝いの盃、別れの盃、清めの盃――
酒はあらゆるものを清浄にも、約束をかたくすることもできるだろう。
このプライズは任意のタイミングで使用できる。

<盃の使用方法>
使用には<民俗学>を用いて判定する。
なお、二人とも使用する場合も、どちらか一人だけが判定するだけで構わない。
使用する場合、その意図を宣言する必要がある。
別れなのか、清めなのか。
その意図は使用者にゆだねられる。

君が望む未来を述べよ。

 

【ゾーキング】
意図できるもので思い浮かぶのは三つあるだろう。
なにか約束を固くする、別れを告げる、そしてなにか邪なものから身を清める。
その意味合いは使うものの意思次第だ。

———–
●盃の使用法
これによってエンディングをいくらか分岐させる(詳細はエンディングの項目)。
使用後、マスターシーンが発生するのは清めのために使用した場合のみ。

<清めの盃を使用した場合>
PC2の胃になにかがこみあげてくる。
凄まじい嘔吐感に堪え切れず、PC2は胃の中のものを吐き出す。
到底人間が吐き出すには不可能な大きさの、鬼の頭がごろりと口から転げ落ちる。
鬼の首はごろりと転がり、PC達を見やる。
「悔しや 口惜しや なんたること」
「もう少しで、現世(うつしよ)に戻れたというのに」
「何度も何度も、前のように殺し合えばよかったものを」
「ああ、ああ、口惜し 口惜し」
「憎し 憎し」
そう言ったきり動かなくなる。

 

 

 

 

【シナリオ進行】

■導入
君達は、気が付いたら四方を襖にかこまれた古めかしい和室にいた。
うすぼんやりとした記憶に残るのは、いたって普通の日常を送っていたというもの。
どうして、ここに、いるのか。
その記憶だけがひどく曖昧である。
ただ一つわかるのは、お互いの名前も、この場所も、知らないということだけである。

襖には古めかしい絵が、描かれている。

風雨に踊る獅子。
風に舞い散る桜。
雨の中の橋。
そしてただただ赤く塗られただけの襖。

それらの絵は、奇妙な躍動感をもって君達をみつめていた。

なぜここに、どうしてここに、そもそも相手は誰なのか?
なにもわからないが、焦りとともに君達は思う。
ここから出なくては。

ハンドアウト「獅子の襖」「桜の襖」「雨中の襖」「真っ赤な襖」を公開する。

 

■2サイクル終了後《マスターシーン》
赤い襖からすさまじい音がする。
がたんがたん!
がたん!がたん!
訪いを告げるものには激しすぎる。
偶然にはあまりにも規則正しすぎる。
がたん!がたん!
なにかが己を誇示するように、暴れるように音が響く。
うっすらと、襖が開き、風が吹く。
その向こうから悪臭がただよってくる。
死臭とも血臭ともとれるすさまじい醜悪な気配が、ふすまのむこうに、いる。

以降、ハンドアウト「真っ赤な襖」のハンドアウトを変更。以降調べることができる。

 

■クライマックス

<クライマックスまでに盃を使用しなかった場合>
PC2の胃になにかがこみあげてくる。
凄まじい嘔吐感に堪え切れず、PC2は胃の中のものを吐き出す。
到底人間が吐き出すには不可能な大きさの、鬼の頭がごろりと口から転げ落ちる。

ショック:全員
恐怖判定はそれぞれ別々のもので判定を行う。
PC1:怒り
PC2:悦び

転げ落ちた鬼の頭部はすさまじい勢いでPC2に這い上がり、その肩口にぐちゃりという音を立てて居座る。
みちみち、みちみちとその体に浸食する。
耳元で鬼の首がささやく。
「我らの敵は目の前の鬼ぞ」
「倒さねばならぬ、倒さねば」
真っ赤な襖から首のない鬼の死体が、けたけたとやかましく笑いながらのっそりと現れる。
「善哉善哉。うぬらの苦しみ、なんと甘露なことか」
「さあ、もっと我に糧を。我はそれを食らい、現世に戻る」
けらけらと笑い、嗤い、鬼はPC1に襲い掛かる。

PC2の使命を「PC1を殺す」に変更する。
この使命に反する行為を行うのであれば、情動分野からランダムに特技を選び判定する。判定に成功すれば、自由に行動することができる。
この使命に反する行為というのは、「PC1を攻撃しない」「鬼を攻撃対象する」ことであり、つまりPC1を攻撃する以外は全てこの使命に反する行為に該当する。
以降、エネミーデータAを使用して戦闘を行う。

<盃を使用した場合>
がつん!がつん!と真っ赤な襖から音がする。
やがて、はじけ飛ぶように開いた襖から、頭のない鬼の死体が姿を現した。
「口惜しや なんと、口惜しや」
「もう少しであったというのに!また、また、貴様らの邪魔が!」
「だが諦めるわけにはいかぬ。うぬらを食らい、今度こそくらい、現世へ戻る」

以降、エネミーデータBを使用して戦闘を行う。

□エネミーデータA 頭のない鬼
生命点12
《破壊》《味》《死》《恨み》
基本攻撃《死》
強打《破壊》

※プロットは基本6。PC1を優先的に狙う。

□エネミーデータB 頭のない鬼
生命点6
《破壊》《罠》《死》《恨み》

●アビリティ 基本攻撃《死》
トリック《罠》
 装甲

※プロットは基本6。PC2を優先的に狙う。

 

 

■エンディング

盃の使用方法によってエンディングが分岐する。

○清めの盃
PC達は気が付くと神社の中にいる。
場所は京都、北野天満宮、その宝物殿に。
目の前にはガラスケースがあり、一振りの刀がおさめられている。
錆も血のりも、刃こぼれもない、かつては「友切」とよばれ「獅子ノ子」とも呼ばれ、いまは「髭切」と呼ばれる日本刀。またの名を「鬼切国綱(安綱)」。
その場にはPC達しかいない。
PC達はあの異界を抜け出し、もう自分たちが鬼から逃れたことを実感するだろう。

○固めの盃
その盃に託した想いはなんだったのか。
それはお互いに思い出せない。
PC1は北野天満宮の前、鬼切国綱の前に立っている。
何をしてしまったのか、うすぼんやり、あるいは明確に思い出すかもしれない。
PC2が望むなら、PC2のもとに来てもかまわない。
君達は再会することができた。
けれど、PC2はその身の内に怪異を、鬼を宿している。
正気であるのはいつまでだろうか。

○別れの盃
PC1は北野天満宮の宝物殿の刀の前に、PC2は一条戻橋の上にいる。
再会をしようと考えても、PC2は明確に、出会えば自分の身の内に鬼の姿がいることを感じている。
もし出会えば、それは永遠の別離を意味するだろう。
出会わなくても同じ。
二人はどんな決断をするだろうか。
もう二度と会わないのが一番なのは間違いない。

○盃を交わさず、どちらかが勝つ
PC1が勝てば宝物殿に一人でただ戻ることになる。
友人ともう二度と再会できないという確信を胸に。
なぜなら、友人は自分の手によって死んでいったのだから。

PC2が勝ったなら、PC2は鬼に飲まれていく。
その意識は完全に消えていく。
現代に新しい鬼がゆっくりと顕現する。
次の贄はどこだろうか。
(PC2はロスト)

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■FAQというか備考

○同名のCoCシナリオについて
以前公開していたCoCシナリオ「現の盃」とは、同テーマを共有しているだけで展開は違うためプレイ済みでもプレイ可能です。
なおCoC「現の盃」は現在非公開中です。公開予定はありません。

○PC2の生死について
トレーラーにある通り、死んでるのは前世のPC2で現世のPC2は健在です(でないとエンディング描写がおかしい)。
時間と記憶と事象が入り乱れた煉獄の中にいると思って下さい。
別の解釈のほうが面白かったらそちら採用でお願いします。

○ゾーキングについて
本シナリオではゾーキングにより掘り下げられる情報がありますが、ゾーキングの存在を明示するか否かはGMにお任せします。

○髭切について
実在の刀。
平安時代に源満仲が作らせた刀。名前が何度も変わっている。
源頼光の配下・渡辺綱が一条戻橋に現れた鬼(橋姫)を斬ったという伝説がある。
以降「鬼切」と呼ばれ、獅子のような泣き声で吼えたので「獅子ノ子」、兄弟刀を切ったので「友切」と名を改めている。友切と呼ばれて以降は敗戦が続き、仲間が多く死んだことから「髭切」に名前が戻っている。
現在は北野天満宮所蔵。

○襖の絵柄
獅子の襖は「獅子ノ子」、橋の襖は「橋姫」を示している。桜は別れを、赤い襖は悲惨な末路の示唆。

○刀剣乱舞との関係性
あくまで日本刀・日本史を題材にしたものです。
刀剣乱舞を題材にシナリオ制作したものではありません、ご留意をお願いします。